思考の整理学①:外山滋比古著
「グライダー専業では安心していられないのは、コンピューターという飛びぬけて優秀なグライダー能力の持ち主が現れたからである。自分で翔べない人間はコンピューターに仕事を奪われる。」
外山滋比古氏の「思考の整理学」という文庫本の冒頭にある節です。この本が書かれたのは、何と1984年。約40年前に書かれた一節とは思えない将来を見越した文章です。因みに、冒頭の文章の要旨は、こんな感じです。
人間はグライダー人間か、飛行機人間かに大別できる。グライダーは風の力を使って空に飛びあがれる人。飛行機人間は、自分で推進力を生みだし、自分の力で空に飛びあがれる人。前者は受動的、後者は能動的な生きる姿勢。これまでの日本の教育では、グライダー人間を大量生産してきた。指導者がいて、目標がはっきりしている時代ではグライダー人間が高く評価されるものの、新しい文化の創造には飛行機人間が必要。情報化社会にあって、グライダーの能力も必要でありながら、飛行機として自分で推進力を作り出す能力が求められている。
AIの幾何級数的な進化、シンギュラリティの前倒しの到来。外山氏が予言していた未来像が、現実になっている社会にあり、改めて自分の頭で考えて、自分の足で立つことが求められる時代になっていると感じます。何故生きているのか?なりたい姿とは何なのか?なりたい姿になるためには、何をしなければいけないのか?現代に生きる私たちが、自分の頭で考えて、将来を切り開いていく力が求められます。
この本は私が好きなコメントに溢れているのですが、「忘れることこそが重要」「三上(馬上、枕上、厠上)」「発酵(寝かせる)」など、生きている上で参考になる要素がふんだんに入っています。次回以降、各々の項目について紹介していきたいと思います。
「思考の整理学」
出版社 : 筑摩書房
ISBN-10 : 4480017011
ISBN-13 : 978-4480017017